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人材育成を研究している橋本諭のブログです。eラーニング(e-Learning)や人材育成、インストラクショナルデザインを専門としており、教育工学、学習科学、OJT、ワークプレイスラーニングの研究しています。eラーニング専門家のためのインストラクショナルデザイン、企業内人材育成入門を上梓。

2006年08月09日

2006年度厚生労働省「労働経済白書」

[ワークプレイスラーニング , 教育全般 , 人材育成 ]

厚生労働省より2006年度平成18年度の労働経済白書が発表された。注目点をまとめてみる。

まず、雇用については、景気の回復と共に改善傾向を見せているが、非正規雇用の割合が増加している状況を示している。
賃金は、改善傾向を見せていることや、成果主義などに伴う賃金形態の変化が浸透してきていることを示している。
なお、労働環境に関しては、

週の就業時間が35時間未満の短時間労働者が若年男女で増加している一方、男性壮年層で週
60時間以上の者の割合が増加している。壮年層での長時間労働の傾向は、仕事の質、
量ともに負担が大きいために長時間労働を余儀なくされ、その結果身体や精神の疲れを感じさ
せる働き方となっていることがうかがえる。

と指摘しており、時間給が多い非正規雇用者は短時間労働で、月給制の正規雇用者の長時間労働という実態が見え隠れしている。なお、賃金格差については、従来のように非正規雇用と正規雇用では大きな差があるが、それ以外にも

各年齢階級の平均値である賃金カーブでみた場合、40歳台半ばより若い層ではほとんど変化がみられないが、これを賃金の分布からみれば、30〜40歳台で賃金格差が拡大している。学歴
別には大卒労働者で、職種別には、管理・事務・技術労働者で賃金格差の拡大が大きくなっている

のように、ホワイトカラー間での賃金格差が指摘されている。

また、製造業の生産性の向上についても言及されている。ここでは、技術革新と共に非正規雇用の活用と述べられている。一方で、

電機総研「電機産業における請負活用の実態に関する調査」(2003年)により、請負労働者の活用による職場へのマイナスの影響についてみると、「マイナスの影響は特にない」とする職場は2割程度にとどまり、「新人正社員を増やすことができない」、「ノウハウの蓄積・伝承が難しくなった」、「請負労働者の教育訓練の負担が増した」「請負労働者の欠勤・離職への対応が増えた」、「請負労働者の業務管理の負担増」といったマイナスの影響が生じていることが分かる。このようなマイナスの影響のなかでも、「ノウハウの蓄積・伝承が難しくなる」ことは、わが国の製造業の競争力維持にとって懸念すべき点であると言えよう。

のように、課題も明らかにされており、eラーニングや教育としての役割が期待される部分も指摘されている。


雇用形態については、いわゆる「ワークライフバランス」を取るという考え方から非正規雇用を選ぶ人がいるとする一方で、

若年層では採用抑制が厳しかったことから、1990年代半ば以降、非正規雇用割合が急速に上昇し、不本意な選択として非正規雇用で就職せざるをえなかったとする者が多くなっているが、若年者の求職態度にも問題があったと考えられる。若年者の職業的自立に向けて、より幅広く積極的な支援が求められている

生産工程で働く請負労働者は若年者が多いが、その賃金は現状では年齢が上がっても、また、勤続してもほとんど上がらず、労働者自身も将来に向けキャリアを高めていこうとする意識が
乏しい。

とするなど、非正規雇用の増加は決して景気の影響だけではないことを述べている。

さて、昨今騒がれている格差については、

収入の低い労働者が若年層において増加しているが、今のところ、収入の低い者の多くは親と同居していることなどから、こうした動きは、世帯単位でみた所得格差の拡大に直接つながるものではないと考えられる。しかし、正規雇用と比べ非正規雇用では職業能力開発の機会も十分ではなく、非正規雇用では職業能力形成も進みにくいため、今後、これらの層が独立しなければならなくなったときに、所得格差が拡大したり、固定化することが懸念される。また、最近では、フリーターの減少など状況の改善がみられるところであるが、景気の持続的回復傾向の中で若年者の正規雇用化の動きを推進し、若年者の職業的自立を通じて格差の固定化を招かないようにしていくことが重要である。

のように述べられており、現在は格差は発生していない、あるいはそれほど問題はないように感じられるが、

若年者の就業機会について現状をみると、景気回復に伴い新規学卒者にとっては、正規雇用への選択肢が広がってきているが、バブル崩壊以降、採用抑制が厳しかった時代に非正規雇用に就いた若年者にとっては、正規雇用への移行は依然として難しい状況にある。パートやアルバイトの仕事を繰り返しながら不安定就業を続けている者も多く、こうした人々の年齢層も次第に上がっている。このように、職業氷河期世代の「年長フリーター」には滞留傾向がみられ、就業意欲に欠ける、いわゆるニートの数も近年高止まりしている。
現状では、新規学校卒業後、パートタイマーやアルバイトなどの非正規雇用の仕事についた者は、正規の雇用に転職しようとしても容易ではなく、職業能力開発の機会も相対的に乏しい。また、勤続してもあまり賃金は上昇せず、離職率は相対的に高く、所得は低い水準にある。このため、非正規雇用の若年者は、親から独立することが難しく、親と同居する者の割合が高く、有配偶率も低い。これらは進行する少子化の傾向をさらに促進する要因にもなっているほか、公的年金に加入していない者の割合も相対的に高いことから、日常生活で生じる事故や老後の備えができていない場合も多い。

このように述べられており、現状のように若年層に非正規雇用が多いことは社会問題であると指摘している。
なお、この原因については、企業の姿勢を批判しつつ、改善を要求している。

企業は、若年者を雇用契約期間の短い非正規雇用として調達することによって、コストの抑制や生産・サービスの柔軟な提供を実現することができたが、このような企業行動は、長期的・継続的な視点を欠き、若年者の育成を通じた職業能力の持続的な向上を引き出していくことはできないであろう。

中略

労働者の職業能力は、職務の経験を積みながら技術・技能を一つ一つ身につけることによって高められるのであり、新規学卒者の計画的な採用と育成は、それぞれの企業にとって価値ある人材を採用し育て、蓄積していくことを意味する。人口減少に転じた我が国社会が持続的な経済発展を実現していくためには、企業が長期的・継続的な視点を持って人材を採用し育成することを基本としながら、社会全体として高度な人材の蓄積を図っていくことが重要である。

全体の感想としては、非正規雇用の増加、特に若年層での増加への懸念が強く感じられた。現在の景気回復を下支えしている構造が出来上がっている以上、大きく構造変換させることは難しい。特に、本来声を上げるはずの当人もその地位で妥協しているという現状があることがより難しい問題にしている。一方で、教育機会の格差などは開く一方であるため、こうした層への教育は大きな課題になると感じた。政府の目からは、草の根系のプロジェクトがそれに当たるのだと思うが、民間などの小さな組織でも出来ることはあるだろうと思う。

投稿者 橋本 諭 : 2006年08月09日 00:45 このエントリーを含むはてなブックマークはてなブックマークへ追加

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