トロッコ蜜柑人材育成研究所トロッコ蜜柑人材育成研究所
〜〜It's time to change me!!〜〜
人材育成を研究している橋本諭のブログです。eラーニング(e-Learning)や人材育成、インストラクショナルデザインを専門としており、教育工学、学習科学、OJT、ワークプレイスラーニングの研究しています。eラーニング専門家のためのインストラクショナルデザイン、企業内人材育成入門を上梓。

2005年12月11日

教材を作成する過程では、その教材が本当に役に立つものなのかを検証し、本番で使う前にテストを行う。このテストや改善のことを形成的評価と呼んでいる。

形成的評価の技法は数あれど、基本は、良いものを作るという姿勢だ。また、自らが作ったものが完璧ではないという姿勢だ。ある理論では、これは正しいはずだからというような偏った見方をしていると、取り残されるのである。

さて、その形成的評価を、行っている最中だが、これが苦しい作業である。もし、安易な気持ちで形成的評価を行おうと考えている人がいたら、絶対にお勧めしない。作りっぱなしでいいのであれば、作りっぱなしのほうが断然楽だ。良いものを作ろうとする(実際に良いものかどうかは別として)意思や必要性がないならやらないほうがいい。

形成的評価では、様々な意見を出してもらうことが重要だと思う。それは、いくら対象者が同じような属性を持っていたとしても、人それぞれ個性というものがあるし、その時々により受け取り方は異なる。できる限り、多様な意見をより集めたほうがより良いものを作れると思う。

しがし、この多様な意見をどう扱うのかに明確な解は存在しない。
少し違う例になるが、インターネット上で手帳を販売しているほぼ日刊イトイ手帳(ほぼ日手帳)は、毎年ユーザからのフィードバックを元に製品を改良しているという。

ほぼ日手帳の秘密―10万人が使って、10万人がつくる手帳。
4344010639山田 浩子 ほぼ日刊イトイ新聞

幻冬舎 2005-11
売り上げランキング :


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

このプロセスは、まさに形成的評価の実例とも言うべきものだと思うが、実際の現場を記した本書では、混乱振りが伝わってくる。例えば、手帳のサイズにしても、小さくしろ、大きくしろと言った意見は同数出てくるのだそうである。同様に、デザインや仕様についても同じだそうだ。また、こういう意見を言ってくれるユーザは全体から見ると小数のため、そのまま意見を尊重しても、全体の満足度を上げられるかは定かではないという。

実は、僕が今接している状況も、それと似ているものがある。確かに、明らかに改善しなければならないポイントのほうが多いのだが、一方で、待ったく真逆の意見が集まることがある。また、それらの意見は、送ってくださる人は正しいと思って送ってきてくださるのだから、それを否定することはできない。また、どちらが正しく、どちらが間違っているという種類のものではないと思うからだ。

それゆえ、僕は、意見が集まれば集まるだけ、より良いものを作ろうとすればするだけ悩むことになる。時間的な制約ゆえに妥協しなければならない点は致し方ない。良いものを作るがゆえに、時間が足りませんでしたというのは、今の時代幼稚園児でも通用しない。(←自分へのプレッシャー)

また、形成的評価のプロセス自身が、その教材をいったん否定するところから始まる。当たり前なことだが、これは非常につらい。見た目はどうあれ、命を懸けて作ったものを否定されると、はらわたをえぐられたかのような思いがあるし、少なからず悔しさは残る。しかし、それを耐えてこそ良いものを作れるのだと信じ、今は耐えている最中だ。そのため、ある意味、否定してくれる人は神様みたいなものなのだ。しかし、人間には、「気持ち」や「プライド」のようなものがあるため、神様であっても神様には見えないものなのだ。ただ、そこを耐えなければ次の一歩は歩めない。

つまり、僕は最後の最後まで悩み続けるのだと思う。良いものをつくりたいという気持ちが萎えてしまうまでは…

投稿者 橋本 諭 : 2005年12月11日 15:47 このエントリーを含むはてなブックマークはてなブックマークへ追加

このID instructional design(インストラクショナル・デザイン)カテゴリの関連記事


« eラーニングカンファレンス eLC | メイン | 強がってはいますが… »

おすすめ情報

あなたの会社に、人を育てる科学はありますか?

企業内人材育成入門
企業内人材育成入門中原 淳 (編集), 荒木 淳子, 北村 士朗, 長岡 健, 橋本 諭

ダイヤモンド社 2006-10-20


Amazonで詳しく見る
by G-Tools


コメント
コメントしてください




保存しますか?


トラックバック

このエントリーのトラックバックURL: