2005年08月06日
高等教育のeラーニング抱える問題 私情教の学長会議より
[eラーニング ]
内田樹の研究室: るんちゃん・健ちゃんと日本の高等教育の末路にて、JUCE私立大学情報教育協会の教育の情報化推進のための理事長・学長等会議という一般人には参加できない会議の模様が語られている。
私立大学情報教育協会、通称私情教は、私立大学の情報教育の中心的存在である。その理事長・学長会議ということは、私立大学の意思決定者による会議ということで、今後の私立大学のeラーニング化をうらなう上で、重要な会議のひとつといえる。
その感想は、eラーニングの観点から見ても非常に興味深いものがある。
内田氏によると、文科省がeラーニング化を進めるのは次の理由によるものだとしている。
1.学生の学力低下の是正
2.大学がつぶれた際のセーフティネットとして
3.産学官連携の手法として
これらは、日本の高等教育が抱えている問題をあらわしているように思う。
2.3.に関しては、私にとって納得しがたいところがあるので、ここでは記載しないが、学力低下の問題は非常に興味深い。
リメディアル教育の他に、家に帰ったあと自学自習させないとどうにもならない(なにしろ連立一次方程式がとけない工学部学生とか、生物を履修していない医学部学生とかがざわざわいて、ついに小学校の算数からのリメディアルをはじめた私大もあるのだ)。 そのためにはweb上に教材を載せて、自宅でばりばり宿題をやらせるのが効果的ではないか・・・と文部科学省&私情協はお考えになったのである。 もちろん、その採点だの集計だのをしている暇は教師にはないので、それをすべて機械的に処理できるようなシステムを開発しましょう、というわけである。 ロボット家庭教師のようなものをご想像いただければよい。
リメディアルの問題は、特に私大においては問題になる。それは、入学者のレベルは入試の倍率が下がれば、落ちてこざる得ない。しかし、入学者を減らすことは経営上できない。そのため、学力のレベルは落ちてくる。また、さまざまな入試形態を用いているので、ある科目は勉強してこないというような事が考えられる。これらのことから、リメディアルは重要な観点となる。
しかしながら、そのリメディアルの内容は、高校以下の内容なので、大学の先生を充てるのは、リソースの有効活用とはいえない。そこで、その部分をeラーニング化しようという流れがあるのだ。
なお、ここで語られている、ロボット家庭教師というのは、ほぼティーチング・マシンなので、さすがにそれは誤解だと思うが、大きな差異はないものと思われる。
また、高等教育の質保障という意味で、単位認定の話が非常に興味深い。
そもそも「単位」というのは前から何度も申し上げているように国際的な標準規格であり、45時間のワークを指す。すなわち15時間の教室における課業と、30時間の自宅学習である。 現在、大学では90分授業15週で2単位を与えている。
単位認定は、確かにこのような基準がある。しかし、有名無実化していることは誰の目にも明らかだ。(国際標準規格というのは、恥ずかしながら初めて知りました。何か資料があったら、どなたか教えていただけませんでしょうか)
では、この単位認定はeラーニングで解決することができるのだろうか。
結論から先に書くが、eラーニングはログを管理できる。そのため、技術的には、どれだけ学習したのかを把握することはできる。しかし、やっているところは現実ないと思う。
2単位の授業であれば、90時間の学習を保証する必要がある。しかし、現実問題としてeラーニングで授業を行っているという大学で、大学全体としてこの時間を把握しているところを私は知らない。eラーニングを取り入れている有名なS大学やW大学も、担当者に質問したところ、そこまで把握していないといっている。なぜだろうか。
ひとつには、この作業が負荷が高いことがあげられる。インフラ面は、システム担当が担当するが、こういった学習の支援の部分は、誰がやるのかハッキリしていないところがある。そのため、結局は現場の先生がやっていることが多い。現場の先生が90時間を保証しているかどうかを確かめるのは容易ではない。そんなことではないかと思っている。
学力低下の問題には、どのような手があるのか、それは模索している段階である。eラーニングと一言でいっても、ここに出ているようなものだけではない。むしろ、ここに出ているのは、現状の教育から比較的近いところ、つまり、現状の教育を担当している人、受けている人にとって理解しやすいものというところがピックアップされているに過ぎないと思う。もっと、これから出てくるのが、面白いところだろう。
内田氏は、「聞けば聞くほど、日本の高等教育は末期的であるなあ・・・との感を深くして」と語られているが、eラーニング側から反論をさせてもらえば、これをどう解決しようかという試行錯誤の上で、eラーニングとなっていることを訴えたい。中には、システムを売り込もうとしているだけの人、研究対象として面白そうだからやってみようという人もいる。しかし、大半はそうではない。また、eラーニングのeの部分などどうでも良いという人が多い。教育をどうするか。それがeラーニング業界がもっている共通の問題意識だと思う。
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