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人材育成を研究している橋本諭のブログです。eラーニング(e-Learning)や人材育成、インストラクショナルデザインを専門としており、教育工学、学習科学、OJT、ワークプレイスラーニングの研究しています。eラーニング専門家のためのインストラクショナルデザイン、企業内人材育成入門を上梓。

2005年07月21日

eラーニングとは教育のIT革命です。

[eラーニング ]

当ブログのタイトルにもなっているeラーニングについて改めて考えてみたい。

eラーニングという言葉自体は、人によりさまざまな定義が存在する。人によっては、WBT(ウェブベースドトレーニング)を基本とした遠隔教育だし、人によっては教育改革のためのツールという具合だ。現在では、教育のためのコンテンツを売っている会社などは、前者の定義が多く使われているように思う。逆に研究者の定義はどちらかというと後者に近くなる。

前者と後者を見分ける手法は、eラーニングを説明する際のキーワードである。前者は「いつでもどこでも」とか「コスト削減」というような言葉でeラーニングを説明する。後者は、IDや教育工学や心理学の理論を実現するための手段として説明する。

これらは、どちらがいいというものではない。個人的には、どちらとも中途半端だと思っている。

「いつでもどこでも」というのは、教科書や参考書の勉強はいつでもどこでもできなかったのですか? という疑問がある。さらに、通信教育とはどう違うのですか? という疑問が立ちふさがる。

また、「コスト削減」というのは、水戸黄門の印籠のように使われている。確かに研修費用を削減できるとは思う。しかし、それはITの効果、つまりeの効果であって、ラーニングはどこにあるのか?ということが聞きたくなるのだ。教育をデリバリーする観点だったり、アーカイブし管理する観点だけでは、ラーニングの観点がまったく欠けていることを感じる。

逆に、教育改革のツールとした場合、具体性に欠ける面がある。確かに、eラーニングのラーニングの方に着目した場合、今までの教育を大々的に変化させるという一面はある。FD(ファカルティディベロップメント)などは、どんどんと着手しなければならない。

しかし、これらはすべて実行を伴ってはじめて意味があるものだ。単に、提言するだけでは始まらない。どんな問題があり、それはどうすればクリアできるのかを考える必要があるのだ。とかく、できない理由のみを挙げて議論が終わる事がある。これでは、eラーニングだろうが、なんだろうが、意味はないであろう。

さて、では、私自身はどのように思っているのかを書きたい。

私は、eラーニングとは、教育のIT革命だと思っている。

eがつく、その他のものを見てみよう。eビジネス、eコマース。これらの言葉は、今ではあまり聞くことはない。なぜだろうか? それは、これらの言葉が当たり前になっているからだと思う。株式をネットを使わずにトレードする人は、現在ではほとんどいない。アマゾンを便利だから以外の理由、つまりeビジネスのさきがけだからという理由で注目している人も少ない。両者とも既にあって当たり前、eで当たり前になったのだ。

では、当たり前になったからといって、何も起こらなかったわけではない。当たり前になる過程では様々なことが起きている。はじめはITの強みによりコスト構造などが変化した。そして、その後e以外の箇所に飛び火し大きな変化をもたらした。ロングテールなんてのは、その典型だ。その結果、現在のビジネスの世界の常識やルールは、IT革命以降一変したといっても過言ではない。

では、eラーニングにこれ以上の変化があったのだろうか。また、あるのだろうか? 世の中の仕組みを一変する以上のものがあったのであれば、またあるのであれば、それはIT革命以上のものだと思う。しかし、実際にはIT革命と同等程度のインパクトにしかなりえないのではないかと思っている。

では、私がeラーニングに対して悲観しているのかというと、そうではない。むしろ、もっと大きな変化が起こせるはずだと思っているのである。現状ではIT革命のようなインパクトは起こせていないだろう。しかし、起こせるポテンシャルをもっていると思っている。

本日、eラーニングワールドのカンファレンスで、ネットラーニングの岸田社長が、いまだeラーニングの可能性の10%程度しか力を出せていないと発言していたが、私も同意見である。まだまだ、いろいろな可能性が眠っているのだと思う。

今後、eラーニングという言葉も当たり前のものになっていくことだと思う。そしてeラーニングという言葉は衰退する。それは、eラーニングが下火になるからではない。当たり前になるからだ。

実際、eラーニングに日常的に触れていると既に当たり前になってきており、別にeラーニングを意識することはない。

しかし、ある意味では当たり前になるところまでが一つ目の勝負であり、当たり前になってからが本当の勝負があると思う。

シリコンバレーがなぜすごいのかという文脈の中で、何年かに一度、それまでの勝者が作り上げたルールを一変するような企業が出てくるからだといわれている。それはyahooしかり、googleしかりだ。eラーニングの世界もITの世界に属している以上、このようなパラダイムを転換するような出来事が起こせるはずだと思っている。

問題は、それを誰が起こすのかということなのである。

投稿者 橋本 諭 : 2005年07月21日 22:43 このエントリーを含むはてなブックマークはてなブックマークへ追加

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