2005年07月10日
BEATセミナーに参加しました
[日記 ]
東京大学BEATセミナーに参加した。今まで、参加しよう、しようと思っていたのだが、いろいろな予定とバッティングしてしまっていたため、なんとなく参加できずにいた。今回初めて参加することができた。
今回のテーマは、CSCLだった。コンピュータ支援協調学習という意味だ。言葉としての意味は、この程度なのだが、その奥にはさまざまな歴史や研究、それに技術とのまさに、コラボレーションがある。それを「魅せます、CSCLのすべて:1日でわかる協調学習」という具合に、CSCLを一日で語りつくそうというのだからすごい。講演者は、東京大学中原さん。うちのブログへの出演度は、NO1だろう(笑)
そのセミナーだが、実際に、一日で語りつくされた感がある。マジでヘビーだ。教育への基礎知識がなかったら確実に寝る。でも、ちょっとフックがある人であれば、その知識の整理された示され方に驚きを覚える前に感心してしまうだろう。そしてCSCLの奥深さの中に引き込まれる。正直、僕なんて引き込まれちまった方だ。
さて、CSCLってどうして普及しないのか?ってのが基本的な僕の疑問点だ。
でも、それは、はっきり言って簡単にできるものではないからだと思う。少なくとも、CS、つまりコンピュータに支援されるのだから、コンピュータが必要だ。それも、CL、協調学習ができるものでなければならない。これを読んでいる方は、専門知識を持っている方が多いだろうが、なにも知らない人にこのCSをどのようなものか説明し、実際に使ってもらうことができるのか?ってのが一番難しいところだと思う。
また、CLの部分も難しい。ある授業(高等教育を想定)で使用することを考えよう。30人のクラスで、CSCLを行うとする。30人のクラスなので、3人ずつ10チームを作成する。そして、それぞれに役を与え、1チーム3人、3役のチームとなる。このようなチームでCSCL、ここでは簡単に掲示板を用いてディスカッションを行うとしよう。
はじめのうちは、みな面白がって掲示板に書き込みをする。そのうち、あるチームのうちの一人がやる気がなくなる。ディスカッションに参加しなくなる。役が与えられているため残りの2人ではディスカッションにならなくなる。残りの2人は、シラケテしまってディスカッションをしなくなる。
全体としては、30人中1人がドロップアウトしただけだ。大学などで考えればものすごい成功している授業でもこんなに参加率は良くない。大成功といえる授業のひとつにあげられるだろう。しかし、グループを組んでいる関係上、一人がドロップアウトするとほかの2人に影響が出る。じゃあどうすればいいの??ってのが単純な疑問。もちろん、CL以前の問題に過ぎないが、授業が成り立たないのであれば、同じことだろう。
授業で実施しているのであれば、余裕を持ってグループを組むなんてことはできない。単純に授業運営(この場合高等教育機関や企業内教育)の視点から見ると、グループ分けは非常に大きな問題になると思う。
授業は一発勝負、生ものだ。そのときそのときの状況がどんどんと変わる。これ以外にもさまざま解決しておかなければならない問題がある。ある意味ではすべて想定の範囲内にしておかなければ、CSCLはできないのではないだろうか。(想定内にしておくのは、IDの範囲だ。この辺はコラボできるところじゃないかな)
さてさて、そのように問題はあるのだが、はっきり言ってそんな問題をぶっ飛ばすほど面白い分野であることも確かだと思う。教育効果があるかどうかってのは、専門家に任せておいて、こんな授業方法があるのなら、取り入れればいいじゃん!!ってのが、正直なところ。研究室でやってたってしょうがない。普及させていかなきゃ!!、儲かるんだったら稼がなきゃ!!、面白いものは何でも取り入れちゃえばいいじゃん!!。できない理由を探すのは簡単だから、どうやったらできるのかを考えていきたい。
お試しCSCLなんてのがあったら、面白そうだなぁ。
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コメント
1. 投稿者 Masato : 2005年07月10日 14:10[RES]
Cooperative learning のチーム編成で 3人組というのは珍しい。 伝統的教室環境では 個々の学生に、少なくとも1回は、in-Class presentation の機会を与えなくちゃならないから、少人数のチームを多数チームとして全体構成すると、発表セッション数が多くなっちゃうわけ、このあたりが実際やってみると大変。 教えるというよりも、なんたってtime-keeperだから。
2. 投稿者 Masato : 2005年07月10日 14:45[RES]
問 CSCLってどうして普及しないのか?
答 元来のCL(Cooperative Learning)を教育の方略として使っていないからです。
e-Learning を切り口にして、後からインストラクショナル・デザインが入ってくる現象と似ています。 すなわちコンピュータ利用での当該技法をきっかけにして親技法が後から来る。ところがその親技法(算数教育法の親学問が数学であるといった表現)について追究せずに終ってしまうことがあるらしい。
Cooperative Learning 意外に実務書が出ています、ところが我が国教育界で参照していると感じられません。
古くは、Johonson D. W. , Johnson R.T.,近年ではCooper J. L., Abrami他 初等中等教育で試行されてうまくいって高等教育界にまで波及している模様です。どのようにチーム分けするとよいか、どんな手順で実施するかまで実に泥臭く具体的に扱っています。要点の一つはチームの要員の異質性を意図してつくり、互いに尋ねたり、答えたり、おしえること、おそわったりさせることです。一斉授業形式と比べるとあたまの使い方が演習活動中に対人面に活性化します。運営のためにLearning objectivesをあらかじめ用意することにISDと変わりありません。 CLの運営は事例研究やゼミ(セミナー;seminar 5))の運営に似ている面があります。おしえる側は監視と介入、質疑応答、学習系列への瞬時の判断などを要求される傾向があります。
1) Johonson D. W. , Johnson R.T.,Smith K. A.(1991). Cooperative Learning Increasing College Faculty Instructional Productivity. ASHE-ERIC.
2) ibid. ACTIVE LEARNING: Cooperation in the College Classroom. Interaction Book Co.
3) Abrami et al. (1995). Classroom Connection. Understanding and Using Cooperative Learning.
Harcourt Brace.
4) Smith K. A. Going Deeper: Formal Small-Group Learning in Large Classes. in MacGregor J. et al.(2000), Strategies for Energizing Large Classes: From Small Groups to Learning Communities. Jossey-Bass.
5) Romiszowsiki A. J. (1984). Producing Instructional Systems. Lesson planning for INDIVIDUALIZED and GROUP learning activities. Kogan Page.
3. 投稿者 Masato : 2005年07月10日 18:15[RES]
補遺
忘れていた。もっと古い 1960年代まで遡る 起源があった。F.S. Keller.
"Good-Bye, Teacher ..." Personalized System of Instruction (PSI) が青本(Ely & Plomp (1996). Classic Writings on Instructional Technology. Libraries Unlimted. に収録されています。Keller Plan のキーワードでウエブを検索すると幾つか記事がヒットします。 Kellerの技法を使うと学生の成績の分布に特徴が出ること、特に低成績者が激減することを示しています。
4. 投稿者 kogo : 2005年07月10日 21:10[RES]
Masatoさん、ひとつ教えていただきたいのですが、協同学習の文脈でPSIが出てくるというのはどういう理由なのでしょうか。
5. 投稿者 Masato : 2005年07月10日 22:02[RES]
PSIは、独立で学習させるのであるから協働学習とは別ものです。 しかし、わたくしがPSIを持ち出してしまったことの背景には、PSIが、lecture-listen-test model ではないこと、講義のかわりにテキストやその他リソースを使うことがあります。
私は、つぎの2つを混同して、別のものでありながら同じ類のものと惑いがありました:
a)PSIは、ある学習の単位を修得するまで次に進ませないやり方である
b)協働学習の場合,評価規準のセットのなかに修了試験を併用して学習目標達成を判断する。 自身が協働式を運営したとき、試験で区切ってつぎに進めることを学生役に強調していた
6. 投稿者 Masato : 2005年07月10日 22:11[RES]
PSIは協働でなく個別化ですから方略としては協働式とは別物です。 しかし、私には、つぎの条件たちのもと、2つが似ているかのように思いこみがあり、PSIを持ち出してしまいました。
a) PSIはある学習単位を修了するまで、つぎに進ませない
b) PSIでは講義のかわりに教科書や講義でなにリソースを利用する
c) 自身が運営するとき協働式において修了試験をマイルストーンにして進行することを学習者に強調している
d) PSIの事例で報告されている成績分布が、協働式であらわれた成績分布に似ている
7. 投稿者 hashimoto@トロッコ蜜柑
: 2005年07月10日 22:21[RES]
>>1 Masatoさん
理屈を説明することは難しいのですが、3人組はなかなか面白いですよ。議論をしていると3者で分かれることもありますし、1対2になることもあります。対立や議論を避けて、なあなあになることもあります。
それに、いろいろな役をつけることができるので、設計のしがいもあります。
8. 投稿者 Masato : 2005年07月10日 22:26[RES]
青本を今、もう一度読み直してみるとつぎのくだりがあり、personalized といえども 学生どおしやりとりして学習する様子が描かれています:
"In the crowded proctor's room, 10 pairs of students can be found concurrently engaged in academic interaction, with no couple bothered by the conversation of another, no matter how closed by."
わたくしは、ことし教室のなかにじっと教卓でチームの活動に(内職しながら)聴き入っているうちに、だんだん、今までに経験しなかった学習のやりとりの情熱に驚きいったことを思い出します。
9. 投稿者 Kogo : 2005年07月10日 22:56[RES]
Masatoさん、お答えありがとうございます。
なるほど確かにPSIでも、学生同士の教え合いはよく観察されますね。
また、協同学習でもPSI流の通過テスト(習得確認テスト)を置くことで、良いデザインができそうな気もします。ヒントをありがとうございました。
10. 投稿者 hashimoto@トロッコ蜜柑
: 2005年07月10日 23:27[RES]
コメントありがとうございます。なかなか高度な議論になった気がします。
ちょっと僭越ながら、少し補足させていただきます。
PSIは、ARCSモデルで有名なケラー教授が1960年代に提唱されたものです。大きな課題から小さな課題に分割し、一つ一つを学習者が個別に確実に達成していくことを目指しています。そのため、授業中では、先生は学習者全員に講義を行うのではなく、一人ひとりが個別の教材を元に、自分のペースで学びます。順々になった課題をクリアしないと次に進めないので、授業に取り残されるというようなことがなくなるといわれています。個人的には、公文式のような学習方法だと思っています。ですから、Masatoさんがおっしゃられている成績分布というような話につながるのですね。
基本的には、PSIは行動主義のもと考えられているので、構成主義のもと考えられているCSCLの文脈では語られません。
一連の議論はこのような背景があるものと考えています。
PSIについては、kogo先生のhttp://kogolab.jp/cgi/yukiwiki/wiki.cgi?GakkaiDaigaku2000#i2
GakkaiDaigaku2000 - 個別化教授システム(PSI)に関する研究のレビューと日本の大学への適用可能性を参照ください。
違っている点がありましたら、どなたでもお気軽にご指摘ください。また、もっとラフなコメントでもOKです。
11. 投稿者 Kogo : 2005年07月10日 23:47[RES]
橋本さん、PSIは、Fred Keller、ARCSは、John Kellerで、別人です。
12. 投稿者 hashimoto@トロッコ蜜柑
: 2005年07月11日 08:07[RES]
>>11 Kogoさん
お恥ずかしい限りです。
ケラーって聞いただけで、この2年くらい完全に勘違いしていました。
こんな人は、ほかには居ないでしょうけど、100人に一人暗いいるかも知れませんので、ログを残しておきます。
13. 投稿者 hashimoto@トロッコ蜜柑
: 2005年07月11日 08:22[RES]
なぜ勘違いしているのかを考えてみました。
John Keller先生にお会いした際に、「君はkogo君を知っているか? 僕の勉強を日本語でしたいんだったら彼を学べばいい」ということをおっしゃっていただきました。
その後、すぐにkogo先生のPSIの発表を拝見したので、あーあケラー先生ってのは、いろいろやっているのだなと勘違いしてしまいました。
よく考えてみると、全然違うことなんですが、先入観は恐ろしいものです。ご指摘ありがとうございました。
14. 投稿者 sakaki : 2005年07月11日 13:24[RES]
個別か?グループか?というなつかしいテーマが出て来たので、つられて出てきちゃいました。60年代から70年代に叫ばれた個別化方式は、CAIを例とするように隔離された個に知識を詰め込むかたちになって行きました。一方グループ学習方式も、落ちこぼし、浮きこぼしを無くせず、効率がわるいという理由で、学校では一斉学習を一部補うという形でしか現在に生きていないようです。しかし、そのことは当時から予想されていて、グループ学習方式でやるCAIシステムというものも一部で開発され実験されています。なぜそれが、流行らなかったか?社会の学習観、教育観が変わらなかったからでは無いでしょうか。
学習は「個人が社会への参加によって自己の生活に文化を取り入れていく行動」であり、そうした「行動を通して自己の知見を作り上げていく行動」の姿勢形成を目標に据えてCSCLを考えています。ちょっと場違いだったかな。まいいや。
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